○あらすじ2018年頃のVtuberが登場したての頃を舞台に、Vtuber事務所『Re:BIRTH UNION(リバースユニオン)』に所属する執事Vtuberの正時廻叉とお嬢様Vtuberの石楠花ユリアを中心に、Vtuberの配信生活が描かれています。○ジャンルいわゆるVtuberものです。○ボリューム68万文字(2022年3月27日現在)と、それなりの量があります。数話で1セットの中編を繰り返す形式です。○よいところ・Vtuber群像劇Vtuberものの小説だと、登場人物が個人勢の主人公とその周囲のVtuberだけだったり、箱に所属しているVtuberが主人公でも箱内だけで物語が完結していたりと、小さくまとまる場合が多いと感じていたので、様々なところに所属しているVtuberが多数登場しているこの作品は新鮮でした。出番が少ないキャラでもかなり濃いうえ実在性が高いので、小説内で推しを見つける行為がそのままVtuberを推す行為の疑似体験になります。・Vtuberへの夢黎明期が舞台になっているからか、あの頃Vtuberに当時特有の(無責任な?)希望とか夢を抱いていた時代の空気がそのまま再現されているように感じました。(起こっている出来事は現実と全く違うのに!)これだけだと懐古する作品みたいですが、タイトルに「虚実混在」とあるとおり、Vtuberと現実(具体的には「中の人」、「魂」)との関わりについて深く切り込んでおり、かなり挑戦的です。特に直接的にこのテーマを取り扱っているのは、100-106話です。ここでは設定でVtuberにおける「魂」の再定義を行い、ありがちな初期設定と実際の配信者の乖離に理屈付けを行い、物語に昇華しています。本当に見事だと思います。ここに限らず、この作品はお約束をさらに掘り下げることが多いように感じます。・Vtuberの恋愛それはダメだろ、と思わなくもなかったのですが、作中でもそれを前提にして、さらに彼らなりの納得できる答えを出していたので、安心しました。読み進めていくと自然に応援するマインドになると思うので、心配しなくても大丈夫だと思います。・民度配信者全員が努力と研鑽を欠かさぬ求道者なのは好感が持てます。常に全力で挑戦し続けている、その姿を尊く感じます。もちろんリスナーもめちゃくちゃ民度が高いです。頑張っている人を応援するという基本的な態度を貫いています。・まとめVtuberとは何か?なぜVtuberになるのか?というかなり根源的なところを掘り下げた、Vtuber文化の楽しいところを詰め合わせたような作品です。生配信やイベントなどを時系列順に描くことで物語を進めているので、実在のVtuberを追いかけている気分になります。○まずどこまで読むべきか個人的には84話が一番好きなので、そこまで読んでほしいのですが、少し長いので、まずはPhase.1が終わる52話まで読んでみてください。
文字数:1268文字
編集日:2022-04-18