世にも珍しい囲碁ラノベ。中華ファンタジー世界に転生した少女が星天と名乗り、命懸けの対局に挑んでいく。囲碁という、それなりの割合の読者があまりなじみのないと思われる題材でこれほど多くの支持を得られた理由は、その描写の巧みさ、そして星天という主人公の輝きの強さにある。この作品は常に一人称で進行し、視点人物(おもに星天、たまに鳴良 ほか)の心理描写に多くの尺が割かれている。特に対局中は、対局相手の多種多様な戦い方に対し、視点人物がどのように考えて対応するか、その心の動きで一局の流れを表現している。これはすなわち少年バトル漫画の心理戦の文法であり、これによって囲碁がわからなくても読者は作品世界にスムーズに入り、楽しむことができる。その心理描写のほとんどは、主人公である星天のもので占められている。この星天がとにかく強烈に魅力的だ。星天はもとは病弱な少女で、明日の命があるかわからぬ日々の中で碁を打ってきた。星天にとって生きるとは戦うことであることは作中で何度も強調され、彼女は何度も望んで負ければすべてを失う戦いに挑んでいく。彼女から感じるのはすさまじい命の輝きだ。過去や未来ではなく現在、この一瞬のために彼女は生きて、碁を指している。誰もが彼女に捕らわれ、目を離せなくなる。この強烈な輝きこそが本作が多くの読者に支持された理由だと思う。このふたつが合わさり、魅力的な物語が紡ぎ出されている。これから注目を受けること間違いなしの作品だ。