なんにでも変身できるスライムみたいな化け物と僕はラブラブなハーレム生活を送れるかもしれない。 の紹介・解説一覧


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 「魔女と毒殺文芸部」でMF文庫Jからデビューした19歳の若き才能による青春ボーイ・ミーツ・エイリアン異能バトル。主人公・月野初は何でもできてあらゆる面で自分の上を行く宇都宮有に一方的にコンプレックスを抱いていたが、ある日彼が不定形スライムの宇宙人であることを知ってしまい、戦いに身を投じることとなる。
 この作品の魅力は何といっても、月野の情動がむき出しに綴られている一人称文体から繰り出される思春期の揺らぎと青さ、そして本気の熱さだろう。彼は宇都宮に若い嫉妬を向けて嫌っており、宇都宮と比較するとひねくれて平凡になってしまう自分にコンプレックスを感じている。(その割には宇都宮が爆乳美少女に変貌しておっぱいを揉むことを提案されるとあっさり手のひらを返して揉みはじめる現金なところがある)そして異常なまでに勝負に貪欲だ。彼はきらびやかな報酬のためではなく、ただ強くなるため、戦うためにいつ死ぬかわからない戦いに身を投じる。そこにはただ勝利への強い執着がある。勝負へのこだわりが強い故か、それに向かい合ったときにこぼれる月野の言葉・心情は普段のひねくれぶりが嘘のように非常に真摯で真っ直ぐな、熱く力のある言葉だ。彼は常に本気でぶつかっている。それがとても眩しい。
 また、この作品にはいわゆるモブキャラが皆無と言っていいほど存在しない。先生やクラスメイトなど、少しくらい名前とか会話があっていいものだと思うが、まったくない。夏期講習編でも、テストを受けた後は勉強もせず、自習室で章ヒロインと毎日チェスで戦っていた。こうしてみると、社会やありふれた共同体といったものが意図的にこの作品から疎外されているとわかる。
 月野は清々しいまでにはっきりと社会におもねることを拒否する態度を表明している。こうした態度はそこかしこで見受けられ、いずれの場合も彼は権威や常識など既成概念から背を向け、一貫して戦いと勝利、存在証明を欲望している。人並みの幸福などまったく求めてはいない。自由を標榜しながらいつの間にか秩序に絡めとられる作品も多い昨今において、彼のスタイルは実にパンクだ。
 この作品は必ず勝つだろうというつまらなさに堕せず、ひねくれた態度でくるまれた中から勝負に本気で向き合う熱さを見せるライトノベルだ。この若くほとばしる才能が、今の時代で輝くことを願ってやまない。
まずココまで!
5話
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文字数:986文字
編集日:2026-03-07
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