この物語は端的に言うならば逆行転生+勘違い物の話です。書籍が9巻まで刊行され、コミカライズ、ドラマCD、舞台化までされている本作、面白いことは語るまでもないでしょう。 では本作独自の要素、差別化点になるところと言いますと、まず解決しなければならない問題の設定です。飢饉が原因となり起きた革命により処刑されて逆行転生した主人公ということで、この飢饉に対処しなければならないわけです。倒せるような敵でもないですし、生半可な対処では大陸全体を襲う小麦の不作、小麦一袋で城が買えるような価格にまで暴騰するという問題を解決することはできません。 内政(他力本願)とありますが、一国の内政のみでとても立ち向かえる問題ではないので、主人公が顔となって外交をしなければならないわけです。学園で他国の王族と仲良くなったり、他国に出向いて交渉を行ったり、自国の貴族を説得しなければならないこともあるでしょう。敵があまりにも強大故に勘違いで評価が上がっていくのも喜んで読んでいられる訳です。 また、ナレーターさんのツッコミ。コミカライズ版でも使われていましたが、地の文でいつもツッコミを入れることで勘違いされてる評価ほど主人公は優秀ではないことが読者に常に明かされています。暴騰していく評価と、現実的な評価の両方を読むことでフラットに主人公を見られるわけですね。 そして、主人公の人柄です。逆行することで逆行前にも着いてきてくれた忠臣を素早く身内に引き入れられるわけですが、これはつまり逆行前にも手遅れでありながら問題に立ち向かったからです。この主人公、割と考えは浅いし、小物ですけど、それでも一番大事なところで逃げない心を持っています。第一部を読めばその人柄と、ギロチンの未来を回避できたとしてその後どうしていくかまでわかるわけですが、個人的にはその後も読み続けて欲しいと思っています。 何故なら、その後にどうしても覆すことのできない死の預言に立ち向かう場面があるからです。未来の導により死ぬことが確定している。それを変えようと全力を尽くして尚変えることができずその当日を迎えた主人公。 彼女がどのように覚悟し、その運命に立ち向かったのか、それを是非とも読んでほしいと私は思います。 長くなりましたが読んでいただきありがとうございました。